月刊医科器械  医療機器・医療用品・医療用ガラス・理化学用ガラス・看護用品・介護用品・歯科機械器具・歯科材料など
年頭のごあいさつ
〜令和・最初の新春に想うことごと〜
(一社)日本医療機器産業連合会
会 長  松本 謙一
1.はじめに

 明けましておめでとうございます。昨年に引き続き、本年も当連合会の活動に対して宜しくご支援・ご協力の程お願い申し上げます。
 昨年も変化の大きい年でした。世界的には、相変わらず米中貿易摩擦、英国のEU離脱騒動や冷え込む日韓関係を始め、世界各地での紛争など、政治・経済を問わずめまぐるしい1年であったといえましょう。一方、日本に目を転ずれば、年号も「平成」から「令和」に変わると共に「即位礼正殿の儀」も無事に執り行われ、文字どおり新しい時代を象徴する1年でした。日本経済も消費税増税などはあったにせよ、雇用・所得環境の改善、公共投資等の内需にも支えられ、まずまずの1年でした。唯、秋口には想定外の台風襲来もあり、あらためて災害時における医療機器や医薬品の安定供給の大切さを思い知らされた年でもありました。
 又、私事ではありますが、昨年6月にやむを得ざる諸般の事情から、私自身が昨年35周年を迎えた当連合会の会長として24年ぶりに再登板することになったことも、あらためてご報告申し上げる次第です。


2.新たなる抱負

 さて、それでは今年はどんな1年になるのか、又、したいのかを考えてみたいと思います。昨今は「ヘルスケア」の分野でなくても「AI・IoT・ロボット・5G」などの表現が「キーワード」として飛び交っています。一方で、「サイバーセキュリティ」「再生医療」など、進むほどに倫理的な課題や規制、そしてコストの問題もあらためて浮上してきております。しかし、それらにめげていては前に進めないでしょう。
 更には、昨今「データの利活用」をめぐっての議論も盛んに行われています。これなども、「臨床研究法」を基に大いにビッグデータを駆使して研究開発を進めようという側の立場にとっては「個人情報保護法」による個人情報の漏洩の防止という壁にぶち当たれば、自ら研究開発の矛先は鈍るでしょう。
 一方、国際的にはすぐお隣の大国「中国」に注目せざるを得ません。「米中通商摩擦」は、簡単に解決出来る問題ではないでしょう。決して日本企業にとっても「対岸の火事」とは言って済ませる問題ではありません。当連合会でも、本件にあらためて正面から向き合い解決していく為にも、昨秋から新たな組織体をつくって対処していこうと実行にかかっております。御期待頂きたいと存じます。
 やはり、とにかく医療(機器)産業にあってのスローガンは「未来を想像し、それを創造すること」だと、私は思います。より具体的に申せば、「医療機器産業の将来」は「イノベーション」と「海外展開」にかかっていると申しても過言ではないでしょう。
 しかし、この2つとも勿論この1年で終結するものではありません。秋の夜長に手にした1冊に「2030年の世界地図帳?あたらしい経済とSDG’s未来への展望?(落合陽一 著)」がありました。要は「医療」の場合でも、イノベーションも海外展開も、余程夫々の国、夫々の地域ごとに各々の「シーズ」「ニーズ」に合うことをやらなければ「費用対効果」からしても自己満足に過ぎないことになってしまうということだと思いました。


3.結びに

 ・ 以上の先行きのみならず、この1年だけでも「働き方改革、スタートアップ企業への対応、人材育成、改正薬機法対応」など、私どもの産業でも取り組まれなければならない課題は山積みしております。
 ・「 単回使用医療機器再製造推進協議会」が2年がかりで「産・官・学」のもと進めてきた結果、当該製品第1号が昨年8月30日に承認されました。安全性・医療費削減・環境問題解決にも有効なことであるだけに、本年もその動きに注目していきたいものです。
 ・ 当連合会加入の21団体・構成企業の皆々様にとって、本年が良い年であることを祈念して筆を置きます。
新年挨拶原稿「令和2年新年のご挨拶」
公益財団法人 医療機器センター 理事長
一般財団法人 ふくしま医療機器産業推進機構 理事長
菊地 眞
 新年 明けましておめでとうございます。
皆様方には幸多き新年を迎えられましたことを心よりお慶び申し上げますと伴に、本年のさらなるご発展を心よりご祈念申し上げます。また日頃より、公益財団法人医療機器センター、並びにふくしま医療機器産業推進機構の各事業に多大なるご支援を賜りまして改めて御礼を申し上げます。

 公益財団法人医療機器センターでは、平成28年度から令和2年度までの5年間を第1期中期経営計画として定め、@信頼される中立的機関であること、A事業化の支援を行うこと、Bシンクタンク機能を強化すること、C教育・人材育成を行うこと、D情報提供・パブリシティ活動の推進、の5つを中核として事業運営を行ってきました。

昨年までの4年間の活動・事業を振り返りますと、
@ 信頼される中立的機関としては、産学官臨の協力のもと、1)医療ガス設備の安全管理(平成29年9月6日 医政発0906第3号)、2)医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について(いわゆる医療機器の治験ガイダンス)(平成29年11月17日 薬生機審発1117第1号、薬生安発1117第1号)、3)「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(平成30年6月12日 医政地発0612第1号、医政経発612第1号)、4)「医療機器のサイバーセキュリティの確保に関するガイダンスについて」(平成30年7月24日 薬生機審発0724第1号、薬生安発0724第1号)の計4つの行政通知のとりまとめ作業を当財団が行ってきました。これらの活動を通して、産学官臨のパイプ役となる信頼される中立的機関としての実績を徐々にではありますが積み重ねております。

A 事業化の支援としては、認証事業と医療機器産業研究所における事業化支援の活動があります。認証事業としては、中期経営計画策定以後、「より丁寧な認証業務」を掲げ、信頼性が高くかつ分かり易い認証業務に努め、より身近な認証機関となることを目指してきました。そのため、昨年は、@指定高度管理医療機器等の認証に関する無料説明会の定期的開催(延べ130人以上の出席)、A認証業務に係るホームページの画面上からの申込みによる無料面談、説明会出席及び認証費用見積もりの受付け、B50件以上の無料面談の実施、C商工組合日本医療機器協会主催の薬機サロン及び一般財団法人食品薬品安全センターの社内研修会への講師派遣等、様々な活動を行ってまいりました。なお、平成30年度の事務処理期間の実績ですが、QMS調査が書面調査又は省略の時の新規認証申請の医療機器センター側の事務処理期間の中央値としては業務日で15日間、また、申請者側が要した期間を含めた業務日では36日間、となっています。さらに、QMS調査が実地調査の時の新規認証申請又は一変申請の医療機器センター側の事務処理期間の中央値が業務日で15日間、また、申請者側が要した期間を含めた業務日では79日間となっています。その結果、昨年実施した顧客アンケート調査によれば、医療機器センターの認証審査の信頼度は5点満点中4.42、満足度は5点満点中4.49と、高い評価をいただくことができました。
他方、医療機器産業研究所における事業化支援の活動としては、「産学官臨」の橋渡し役という中立的立場から事業化支援のための広範な相談を行っており、ここ数年は年間130件程度を推移しています。この事業の必要性の声を皆さまから頂いていることから、中期経営計画策定以後、臨床開発・薬事・保険償還等の経験・知見を有する上級研究員3名、研究員2名(うち1名は本年4月採用予定)、テクニカルアドバイザー1名を加え、より一層体制強化を図っているところです。

Bシンクタンク機能の強化としては、リサーチペーパーを研究員自ら作成する活動は継続しつつも、リサーチペーパーの専門性と多様性を高めるために、大学・研究機関からリサーチペーパーを一般公募する助成制度「公募型リサーチペーパー」を平成29年度から開始しました。これまで9件の採択を行っており、既に「医療機器産業の生産者物価指数と全要素生産性および労働生産性の計測(一橋大学大学院経済学研究科)」、「医療機器産業から見た医療行為の特許適格性と特許権の権利範囲(北海道大学大学院法学研究科)」、「最適非臨床研究評価体制の構築に向けた国内承認申請に関する調査研究(東京電機大学 理工学部)」、「医療機器の薬事申請・保険適用申請における国内オープンデータ活用に関する調査研究(東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座)」の4件を公表してきており、今後も継続して助成制度「公募型リサーチペーパー」を行うことで、産業分析や政策提言活動の充実化を行っていきます。最近では、医療機器産業研究所の上級研究員や主任研究員が日本医療研究開発機構(AMED)のPS(プログラムスーパーバイザー)、 PO(プログラムオフィサー)に就任するなどシンクタンク研究員としての活動実績も認められてきており、シンクタンク機能の質と量の両面の充実、さらには行政関連組織との連携強化が図られてきているところです。

C教育・人材育成としては、“JAAME Academy”シリーズを立ち上げ、第一弾として、医療機器製造販売業において5年程度の業務経験のある方を対象にした「医療機器の開発実務者育成セミナー」を平成28年度から、第二弾として、製造販売業のみならず製造業において医療機器の設計開発・製造・品質保証等に携わる方を対象にした医療機器品質管理監督システム(QMS)講習会を平成29年度から、第三弾として、医療機器業界、会社のエグゼクティブを目指す中堅社員を対象にしたエグゼクティブコース/NEXT経営人材研修を令和元年度から開始しました。医療機器産業には、様々な人材が必要と考えており、当財団は“JAAME Academy”をとおして、医療機器産業に必要不可欠な“ひと”の育成に今後も貢献していこうと考えています。
D情報提供・パブリシティ活動としては、就活生向け医療機器産業魅力発信ウェブサイト「医機なび」を平成30年6月から開始しました(http://www.iryokiki-navi.com/)。この取り組みは、これから社会に出ていく、進路・職業選択を控えている学生をターゲットとして、医療機器業界の魅力や情報を随時発信していくものです。コンテンツとしては、各企業の若手社員へのインタビューを行っている「教えて先輩!」や医療機器業界の職種・仕事、特徴などを紹介している「業界を知ろう!」、医療機器を簡単にイラストなどで紹介している「医療機器って何?」などがあります。関連して大学生と企業の若手社員のクロストークを行う座談会を企画するなど、医療機器“業界”における仕事のやりがいなどを伝えながら、医療機器産業の認知度向上に努めています。また昨年、日本医療機器産業連合会(医機連)内に魅力発信部会が新設され、就活生に向けた医療機器産業の魅力発信に関する様々な活動や「医機なび」との連携などを行っていくこととなりました。医機連の魅力発信部会の副主査を当財団スタッフが務めさせていただくこととなり、一層の連携強化がなされることになりました。今後の活動が活発化していくことが期待されます。

さて、本年は中期経営計画の最終年度となります。第1期中期経営計画の仕上げの時期であると同時に、次期中期経営計画を検討する時期でもあります。次期中期経営計画の策定にあたっては、社会環境(医療機器の位置づけ、人口構成、医療ニーズ、社会保障制度、世界動向等)の大きな変化の中、これからの当財団に期待される役割や社会的使命も変化していくものと考えられますし、当財団は公益財団法人であり、産学官臨の関係者と共に成長する組織でありたいと願っており、今後の当財団への期待を産官学臨のステークホルダーからヒアリングし、それらを十分に加味しながら、考えていく必要があります。皆さま方の医療機器センターへの期待をぜひお聞かせいただきたいと思います。医療機器センターは、これからも産官学臨のパイプ役となって“明日の医療機器”を総合的に支援していく活動を更に充実させていきます。今後も皆様方からの倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 次に、ふくしま医療機器産業推進機構では、福島県から2016年11月に開所した「ふくしま医療機器開発支援センター」の管理運営を受託しておりますが、このセンターは医療機器の開発から事業化までを一体的に支援する国内初の施設として整備されたものであり、福島県が進めてきた「次世代医療関連産業集積プロジェクト」の拠点施設として、その役割や機能に大きな期待が寄せられております。

センターが行う「医療機器の安全性評価試験」の最大の特徴は、大型動物(実験用ブタ)に特化した生物学的な試験から電気・物性・化学的な試験をワンストップで実施できることにあります。開所以来、センターでは、在籍する獣医師や病理医、放射線技師、臨床検査技師等の専門的な管理の下、骨材料の長期埋植試験や血管カテーテル、デバイスの性能評価等を実施してきたほか、病理検査(病理組織標本の作製、走査電子顕微鏡による評価等)や血液・尿検査等についても信頼性の高い試験データを提供しております。また、医療機器に関するEMC試験や電気的安全性試験を始め、防水・防塵試験や梱包輸送試験、インプラント用骨ねじの引抜試験、RoHS指令対象物質分析や残留ガス分析、溶出成分分析など、各種の電気・物性・化学試験について多くのお客様からご愛顧いただいております。

さらに、国際的な各種認証等につきましては、昨年2月にIn vivo毒性試験、一般毒性等に関する試験(局所性に限る)区分で医療機器GLP(優良試験所基準)の適合施設として確認いただいたほか、3月には動物の人道的な取扱いを推進するAAALAC Internationalの完全認証を取得し、動物福祉に配慮した飼育管理と倫理的・科学的に適正な動物実験の能力が認められたところです。さらに、ISO/IEC17025では、7月にお客様からのニーズの高いEMC・化学試験の分野で認証範囲を拡大したほか、最新版である2017年版への移行を実現いたしました。加えて、現在、医療機器GLPについては試験区分の適合拡大に向け取り組んでいるところであり、これらの第三者認証を「強み」として、センター業務の更なる信頼性の向上に努めると伴に、海外からの試験受託も視野に入れながら、より一層、お客様のニーズにお応えできるよう取り組んでまいります。

センターでは病院の臨床現場を再現した模擬手術室と模擬アンギオハイブリッド手術室を備え、内視鏡装置やCアーム、超音波診断装置等の画像診断装置に加えて、高周波手術装置や超音波凝固切開装置などの治療補助機器、鋼製小物についても充実し、様々な診療科に対応しております。さらに、シアター形式時で最大300名程度まで収容可能な研修室を備えており、模擬手術室エリアと双方向の映像・音声配信機能を活用した症例検討会やライブデモンストレーションの開催も可能でございます。これまでもブタを使用した補助人工心臓の埋込みを始め、肝移植や脊椎内視鏡手術など各種トレーニング、学術集会等が開催され、企業や研究者、医師、看護師、臨床工学技士など関係する多くの医療従事者等が参加されたほか、高機能患者モデル人形等の各種シミュレータを利用した医療処置・看護トレーニングでは、新人看護職員研修や潜在看護師の再就職支援研修として、或いは、薬局薬剤師の在宅患者訪問を想定したトレーニングとしてもご利用いただいており、参加された方々からはセンターの設備の使いやすさなど高い評価をいただいております。

当機構の特徴の一つである「事業化までの一体的支援」については、「お客様は専門家による相談対応や製品評価に加え、販売までのきめ細かで継続的な支援を求めておられる」という考えを踏まえながら、福島県と連携し、開発やマッチング、販路開拓、海外展開など、販売に至るまでの各事業を進め、お客様のニーズや課題に合致した総合的な支援に取り組んでおります。特に、コンサルティング事業においては、「MEDIC 医療機器開発支援ネットワーク」における国内5箇所の支援拠点の一つとして、当機構独自の個別に実務をサポートする「Step by Step SUPPORT事業」等との連携も図りながら、薬事専門家による相談助言等を通じて、開発から事業化の各段階に合わせた機器開発の着実な進展の支援に努めております。加えて、マッチング事業では、昨年11月に15回目となる医療機器設計開発・製造に関する展示情報展「メディカルクリエーションふくしま2019」を福島県内で開催したところであり、国内を始めドイツやタイなど海外を含め約230の企業団体が出展され、開発担当やエンジニアの方々、また、大学等の研究者の皆様方等と新しい技術や新しい製品の創出に向けた活発な意見交換、技術交流が行われております。さらに、海外展開においては、医療機器市場の拡大が見込まれるASEANをターゲットとした取組みを進めており、一昨年には、当機構による同行訪問などきめ細かな支援を通じてタイ王国の企業と福島県企業との合弁会社が設立されたほか、昨年は福島県内企業とともにMedical Fair Thailand 2019に出展したとともに、現地の企業、大学、医療機関等との連携強化に向けたマッチング等を実施いたしました。また、人材育成事業では、設計・製造に精通した医療機器エンジニアの育成に向け参入検討の段階から海外展開の段階までを網羅したプログラムを提供し多くの方々に参加いただいたほか、高校生や大学生、若手企業人材等を育成するプログラムを進め、医療機器分野のリーダーによる最先端の技術等に関する特別セミナーを開催するとともに、シリコンバレー短期研修等の取組みも行っております。

前述しましたようにセンターは開所4年目を迎えました。引き続き、国や福島県、関係機関と連携しながら、お客様の目線に立って更なる利用促進に向けた取組みを強化するとともに、専門性の向上に努め、国内を代表する医療機器試験機関となるよう、さらに各種事業を推進いたします。特に、ISO/IEC17025の認証取得や医療機器GLPの適合確認、AAALAC認証取得を十分に活かしながら、より一層、お客様のニーズに応え良質なサービスを提供するとともに、医療機器の開発から事業化までの一体的な支援等に取り組んでまいります。皆様には、今後とも、「福島へ行けば何とかなる」とご認識いただきますとともに、是非、センターをご利用いただき、ご愛顧くださいますようお願いいたします。

 以上、公益財団法人医療機器センター、並びにふくしま医療機器開発支援センターを運営します一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構では、わが国全体の医療機器開発・普及並びに産業振興のみならず、地方発の医療機器関連産業振興にも注力する所存です。両財団が限りなく連携して活動することにより、医療機器に関する「オールジャパンでの取り組み」と「地方独自の取り組み」をより堅固に連携させて、医療機器開発とその事業化、ひいては「わが国の医療機器産業界をさらに確固たる産業に育てること」への一助となれば望外の喜びです。今後も皆様方からの倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

年頭所感
「庚・子(かのえね)」の年、良い兆しが
商工組合日本医療機器協会
理事長 中島 孝夫
 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 本年も皆様方のご指導、ご協力を賜りたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
 昨年は、5月に令和という新たな元号に変わり、新天皇陛下がご即位され、まさに新しい日本の黎明を告げる一年でした。また、ラグビーワールドカップではベストエイト達成という偉業を成し遂げました。その勢いをもって本年に入り、奇しくも本年は十二支の最初である「子年」ということで、再び新しい十二支のサイクルがスタートする年でもあります。元号が令和になってから初めてのお正月が「子年」(庚子:かのえね)から始まるとは、何とも不思議なタイミングではないでしょうか。
 そして閏年、この意義ある年に東京2020オリンピック・パラリンピックが、ここ東京で開催されることは、何かビッグチャンスが訪れる兆候すら感じさせます。
 一方、米・中関係、日・韓関係の先行きも心配になります。本年春には習近平〔シー・ジンピン)国家主席が来日される予定で、元首として公式訪問は08年以来で、両国は12年ぶりの節目を迎えます。日中関係の更なる改善を期待したいものです。ともあれ平和を第一として、日本経済はもとより世界経済が発展されることを切に願うものです。
 ここで、わが業界を見てみますと、医療機器産業は、医薬品とともに日本の「成長産業」と位置づけられおり、現在の医療機器市場の規模は約3兆円との見方もあり、年々伸び続けています。
 また、政府が提唱する「Society5.0」 といわれる、「サイバー空間(仮想空間) とフィジカル空間(現実空間) を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」 も、革新的医療機器創出においての、1つのキーワードとなっています。「Society5.0」は人間中心の社会を目指しているとのこと。その中で、今やAI化が進むことにより、人の働く場所を奪いとられるという心配も出てきています。たとえば銀行の窓口や、ホテルのフロントも AI、ロボットに取って代わるといわれています。そこへスーパーコンピューターを遥かに凌駕する計算能力を持つ、量子コンピューターが出現したり、また、昨年度からも騒がれている通信速度5G(第5世代)という世界、現在の1 Gbpsから20Gbpsと、通信速度が20倍になる。その他、詳細は省略しますが、自動車の自動運転や、オペ室での遠隔操作など様々な恩恵を享受することは間違いないと思いますが、どのような環境になっても、一人の人間の大切さを忘れない社会であって欲しいと願うものです。
 さて、このような環境下で、日医機協は、本年も、医薬品医療機器等法をはじめ、会員企業の業務に係る関係法令の講習会開催などに努めてまいります。具体的には昨年に引き続き協会事業として以下の重点8事業を展開して参ります。 

1. 各種講演会の開催
医療機器産業を取り巻く経営環境の変化に対応し、多種多様な情報取集に努め、会員企
業にとって有益な情報を提供します。
 平成一八年度より実施している「医療機器販売業等の営業管理者及び医療機器修理業責任技術者のための継続的研修」の実施、そのほか、「わかりやすいQMS講習会」、「診療報酬講習会」など開催します。
 講習会は、東京都をはじめ、PMDA、所管の行政庁にもご協力をお願いしながら、強力に展開してまいりたいと存じます。これらの講習会の開催も、長年、医療機器産業を支えてこられた中小の会員企業が医薬品医療機器等法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、情報提供として少しでもお役に立ちたいと願っています。

2、医工連携事業の推進
平成25年度より継続して取り組んでいる医工連携では、令和元年度も、全国の各県並びに各地区の公益産業振興センターとの共催で展示・商談会を開催いたしました。この本郷展示・商談会も今年で7年目を迎え、製販企業と、ものづくり企業との間で、マッチングの成果も出始めております。幸い、この展示・商談会は、当協会が所有する医科器械会館で開催することもあり、東京・本郷地区より、全国有数のものづくり企業を見ることができます。
 その意味から、本年度もこの医療機器産業が集積する文京区の本郷台地を「メディカルヒルズ本郷」と標榜し、継続して当協会の医工連携のキャッチフレーとして、全国に広げていき、マッチングの成果も重ねていきたいと考えています。

3、国際モダンホスピタルショウの活用
毎年夏に開催される当展示会は、延べ約8万人参加というビッグイベントです。昨年は当協会のエリアにミニプレゼンのステージを併設したところ大変に好評を博し、「次回もやって欲しい」との声を多くの方からいただきました。特に参加企業のプレゼンターで、初体験という社員の皆様からは研修の一貫になります、と喜ばれました。本年も団体としての参加を通じて、出展会員企業の皆様とも協力しながら大成功に収めたいと思います。合わせて各企業の「市場開拓・販売促進事業」の一貫になればと思います。

4、関係官庁との連携
関係官庁との連絡会や、公益財団法人医療機器センターへの協力などを通じて、医療機器業界の方向性や課題、医薬品医療機器等法をはじめ法制度の検討に関わり、厚生労働省、経済産業省等の行政機関に対しても積極的に要望・提案を行います。特に医療機器法の制定に向けて前進できればと思います。

5、会員企業間の交流
製造、販売およびサービス業など、業態の枠を越えた企業間の交流に努めるほか、全国の中小企業団体や企業とも協力関係を築いていきます。協会の伝統となっている会員企業の皆様のための野球大会、ボウリング大会、そしてフットサル等の事業を福利厚生の一貫として皆様とともに続けて参りたいと思います。    

6、会員のための医科器械会館の管理・運営
協会の活動拠点である当会館は、会員企業の皆様が気兼ねなく、自由に立ち寄っていただく場として活用していただき、会議室も安価で提供できますので、自社の会議室のごとくご使用して頂ければ幸いに存じます。これからも快適性と永続性の確保を図り、会員のための使いやすい会館として管理・運営を行って参ります。 

7、災害対策・災害救援活動・BCPなどの研究
医療機器団体として大災害に備えた対応を検討します。なお、日医機協は、戦前より会員企業のご協力により、災害時には救援物資や義金を提供するなどの活動を行っている歴史があります。今後も変わらぬ姿勢で参ります。

8、創立110周年へ向けて
10年刻みで歴史の記録を残し、あとに続く後世の方々のためにお役に立てるよう、編纂したいと思います。

以上のような8項目の中で,特に推進していきたい最大の課題の一つは、医療機器法の早期制定です。
 医薬品と医療機器とでは全く性質を異にするものを同じ法律で縛るには、無理があることをすでに承知しながら、今だに進展しないままでいます。これは医療機器産業界にとってマイナス以外の何物でもないと思います。協会として、他の団体とも協力し、制定に向けて少しでも前進していけるよう声をあげ続けて参りたいと思います。

 最後に、全国の医療機器業界団体の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展に、少しでも貢献したいと考えております。

 皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心より、重ねて、お願い申し上げて、新春の挨拶に代えさせていただきます。
新年の挨拶
一般社団法人 日本医療機器販売業協会
会 長  浅若 博敬
新年おめでとうございます。
日頃から我が業界の事業活動等へご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

当協会は一昨年設立20周年を迎えこれまでの活動をふまえ新たなる躍進へと動き出したところです。私はそのような状況の中、昨年6月に第5代医器販協会長に就任いたしました。
設立以来ご協力いただきました協会員の皆様に感謝申し上げますとともに、協会の発展にご尽力された歴代会長の皆様、また多くのご支援をいただきました関係の皆様に改めて感謝いたします。
現在、当協会は会員数約1,000社(2019年10月1日現)となっております。今後も協会員とともに医療機関等への医療機器の安定供給により我が国の医療制度に寄与していかなければならないと決意を新たにしたところです。そして安定供給と2本柱で医療の安全を支える適正使用支援業務につきましては、より質の高いパーフォーマンスを目指して取り組み、会員の社会的地位向上と業界の一層の発展につなげたいと考えます。

さて、まずこれまでの活動をふまえ今後の方針など申し上げたいと思います。かつて中医協などで内外価格差問題の要因の一つとされた業界による流通構造の複雑さに関しては、複雑化の原因を形成しているのは業界ではなくむしろ日本全国自由に医療サービスの提供が受けられる我が国の医療制度の下、多種多様な医療ニーズに業界が応えようとして構築されてきた結果であり、業界自らが進んで複雑な流通構造を作り上げたのではないことを主張してまいりました。この取り組みは業界の正しい姿を認識していただくという意味で成果がありました。そして、こうした業界の活動意義や真の姿を関係者に発信していく取り組みは今後もより深く浸透させていきたいと考えますが、加えてこれからは一般の方々にも裾野を広げ、我々業界の活動が国民の健康の維持に果たす役割が身近なもので、且つなくてはならない存在であることをアピールしていくことも重要ではないかと思います。業界に対する理解を深める取り組みを通じて、我々医療機器販売業界の直面する様々な課題が医療制度の中でごく一部の業界の問題として終始するのではなく、我が国の医療提供体制の持続可能性を考えるうえで重要な要素であることをより多くの方に認識していただかなければならないと感じます。
確かにこういった議論は専門性が必要で関係者だけで議論する方が効率的であるというご意見もあることは承知しています。しかし、我々業界が常に果たそうとしているミッションは「すべては患者さんのために」医療機器を安心と安全を添えてお届けするということですから、対象となるのは治療中の方や要介護状態となり医療機器を使用している方だけではないのです。健康な方でも我々業界のミッション遂行の対象になり得るのです。健康なうちはこの医療を支える機能の維持・継続を真剣に考えようとしないだけではないでしょうか。遠い将来の話、自分には関係のない話で済ませることなく、国民誰にでも関係する問題、社会全体の問題としてしっかり将来を見据えて取組んで欲しいと痛切に感じております。一業界の限られた問題という捉え方のままではこれまでの政策の延長に置かれ、生産的な施策もないままただ体力を消耗してしまうだけではないかと危惧されます。

また、近年特に急速に変化してきている我々業界をとりまく環境の変化に協会としていかに対応するかという課題もあります。現在のフリーアクセス国民皆保険制度は人口増をベースとしたものですが、急激な人口構造の高齢化に直面し、地域包括ケアシステムをいかに実現していくか、社会保障制度をどう再構築していくか議論されているところです。我が国の医療制度や国民のニーズへのレスポンスという観点から業界として今後どのような対応が必要になるか重要なテーマだと思います。業界はこれからも効率化を図りつつ地域医療へ貢献していかなければならないと考えますが、高齢化とともに進む少子化による労働力人口の減少も大きく影響しますので、働き方改革の流れもふまえながら検討していく必要があります。
そして、この効率化に関係してくると思われるものとして、昨年のUDI法制化を契機としてUDIの利活用推進の加速があげられます。各論部分の検討はこれからということですが、その根拠を法律に置くことになった以上UDIの適正な実施及びデータベースへの適宜、的確な反映とその運用状況のモニタリング機能など業界として貢献できる分野の検討をしっかり行うことは重要だと考えます。これまでどちらかというと産業界、行政の双方とも相手任せの感があったと思いますし、産業界内部でも温度差が感じられましたが法制化後は、トレーサビリティの追求はなぜ必要か、薬機法の理念である安全性の確保を再度認識しながら制度の運用にあたらなければならないと思います。そのうえで、UDIに関し業界として効率化に資する部分への提案もできればよいのではないかと考えます。
そこで、情報通信技術を使い受発注、在庫管理、請求業務などを包含した形でトレーサビリティの実現可能性に向けた検討も有効と考え、IT、IoT を利用し個体識別情報を管理、運用する技術の研究開発事業に参画し、先端技術を駆使した医療機器の効率的流通に業界としていかにアプローチし提案できるか検討が動き出しました。このような取り組みの成果が今後さらに地域に密着した安定供給に貢献していくための方向性を考えるうえで参考になることを期待しております。

一方で、質の向上は継続的に取り組まなければならないテーマだと考えます。昨年11月に成立した改正薬機法を考慮すると、市販後の安全対策の強化とともに法令遵守体制の強化が盛り込まれており、我々業界も安心で安全な安定供給をこれまで以上に意識する必要があります。そのため、継続的研修、企業倫理研修など各種研修制度の充実、MDIC及びCDR認定制度の推進協力などを通してコンプライアンス重視と質の向上を図る体質の構築を引き続きめざすことにより業界への信頼を揺るぎないものにしていかなければならないと考えます。さらに、昨年はこれまでの想定をはるかに超える規模の自然災害が頻発しました。「すべては患者さんのために」この信念のもと業界は医療提供体制を支えておりますので、大規模災害が発生した際にも全国組織という利点を十分活かし、途切れることのない医療機器の安定協供給に努めていく必要があります。災害対策に備え大災害時の対応マニュアルの改定・整備、各自治体との連携強化など引き続き取り組んでまいります。

ところで、世界の動きに目を向けると保護主義の高まりを反映し米中貿易摩擦、英国のEU離脱など内向き志向の議論が目立ちます。このような中、我が国はオールジャパンの問題として社会構造、国民の意識の変化をふまえながら今後のあり様を検討しておりますが、決して内向きの議論に走らず我が国全体としてどうあるのが好ましいのか意識していただきたいと思います。業界も我々の発展のみを目指していては、産業間のネットワークが隅々まで張り巡らされて互いに連携し合い全体として機能している現在の社会・産業構造の中では立ち行かないのは明らかです。
今後、協会も政策提言の実現のため、行政をはじめ関係する方々との議論を行うことになると思いますが、議論にあたっては協会設立当初からずっと持ち続けている業界の役割を常に軸として意識しながら臨みたいと思います。そしてステークホールダーの存在も認識しつつオールジャパンの中で我々業界の役割を考え、我々業界の機能が停止することは何を意味するのか、今後どうしていくことにより国民、業界ともに望む姿に進めるか議論していきたいと考えます。
私も令和の時代の初代として、協会設立にあたり当時の協会員の皆様から今日に至るまで引き継がれた熱い思いを初心としてしっかり胸に刻みながら業界の発展と協会の躍進に努めてまいる所存です。
協会員をはじめ関係の皆様方には今後、一層のご支援並びにご指導・ご鞭撻の程宜しくお願いし、私の年頭の挨拶とさせていただきます。
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