月刊医科器械  医療機器・医療用品・医療用ガラス・理化学用ガラス・看護用品・介護用品・歯科機械器具・歯科材料など
 新年あけましておめでとうございます。本年も当連合会の活動にご支援、ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 2018年の干支は戊戌(つちのえいぬ)です。中国の陰陽五行では、戊も戌も変化を意味し、二つが重なることで大きな変化となります。過去を振り返っても、1898年は大隈内閣が成立し、それまでの藩閥政治から政党内閣に移行していきました。1958年には岩戸景気が始まり、高度成長期がスタートしました。また、戊は草木が生い茂ること、戌は草木が枯れることより、生い茂った木を剪定しながら大きくするという事になります。すなわち、成長の機運はあり、しがらみに捉われない新陳代謝が新たな時代をつくっていく年になると私は解釈しています。

 日本経済は、低金利と安定した円相場が追い風となり、景気拡大局面が6年目を迎え企業収益は好調に推移しています。人手が足りないほどの雇用環境にあります。一方、我が国の平均寿命は男女ともに80歳を超え、さらに2025年には団塊世代がすべて75歳を迎えるなど、人類が初めて経験する超高齢社会となっていきます。今後、より地域に密着した医療、介護を提供する地域包括ケアシステムや、健康寿命の延伸により一人ひとりが生涯現役として輝ける社会の実現が重要になってきます。

 2017年を振り返ると、こうした新たな社会や医療の実現に向け医機連は様々な活動を行ってきました。例えば、10月の「薬事規制当局サミットシンポジウム」では、世界30カ国の規制当局トップに対し革新的医療機器を早期に患者に届けるための規制の在り方や規制の国際整合の重要性について産業界の立場で提案をしました。「医療製品識別とトレーサビリティ推進協議会」ではUDI等についての議論を事務局として推進しました。さらに、人材育成については「ジャパン・バイオデザインプログラム」に引き続き協力してきました。こうした取り組みに、ご尽力やご支援を頂いた皆様にあらためてお礼を申し上げます。

 医機連は、2017年6月より「Society5.0を支える医療機器産業をめざす」という方針を掲げています。これには3つの視点があります。第1は、地域包括ケアシステムなどの新たな医療の要請に応え、より良い医療の実現に貢献していくことです。例えば、様々なイノベーションによって、新たな診断方法や治療方法の創出、全国どこでも最先端の医療を受けられる環境の整備、医療介護従事者の働き方改革の推進などです。また、医療機器販売業による適正使用支援業務など、医療現場を支える地道な活動も重要です。第2は、高齢化が進む中で持続的な社会保障システムの構築に貢献をしていくことです。データヘルスやICTの利活用により、医療の効率向上がいっそう進む事を期待しています。第3は医療機器産業の成長です。日本の医療機器市場は、約2.8兆円と世界市場約40兆円に比べ小さく、輸入超過と、まだまだプレゼンスが低い状況です。一方で、医療機器産業には日本をリードする成長産業としての期待があります。特に、デジタル革命はチャンスであると捉えています。

この方針のもと、引き続き3つのテーマを重点に活動を進めていきます。


1. 成長産業としての基盤整備

これまで、技術イノベーションの継続、産業の裾野拡大、医工連携、人材育成、知財、業界安全性ガイドライン、規格などを進めています。2018年は、さらに、デジタル技術などの新たなイノベーションの加速、エコシステム強化、アジアなどへのグローバル展開支援などに取組んでいきます。また、昨年11月の第12回未来投資会議で生産性革命の実現が日本全体の課題として取上げられましたが、医療機器産業においても流通、中小企業を含め業界としての生産性向上につながる様々な活動に注力していきます。


2. 政策提言とステークホルダーとの連携促進

健康・医療や介護の改革の進展に寄与する政策提言を引き続き行うとともに、医療現場、アカデミア、地域、関連産業など多くのステークホルダーとの連携強化、国民やマスコミの方々への周知活動を進めていきます。特に、昨年12月より「我が国医療機器のイノベーションの加速化に関する研究会」(経済産業省)がスタートし、また「医療機器基本計画」(厚生労働省)の閣議決定から1年あまりを経て、医療機器を取り巻く環境はめまぐるしく変貌しています。このような環境の中、医療機器産業の将来像を力強く方向付けていきます。


3. 信頼される産業団体

医療の安全安心への貢献は最優先であり、個人情報保護法、競争法などを遵守し、社会から信頼される産業であり続けることが重要です。最近では、環境への配慮、サイバーセキュリティ対応なども新たなテーマです。特に、2018年度は、臨床研究法のスムーズな運用開始への協力に注力していきます。

医機連は、「優れた医療機器・医療技術の開発と供給を通じて、医療の進歩と医療機器産業の発展に貢献する」というビジョンを基本に、連合会としてのトータルパワーを集結し、また正会員21団体のそれぞれの活動を支援し、医療の進歩と医療機器産業の健全な発展に取組んでいきます。

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本郷記者会・新年特集号原稿「平成30年新年のご挨拶」
公益財団法人 医療機器センター理事長   
一般財団法人 ふくしま医療機器産業推進機構理事長
                   菊地 眞
 新年 明けましておめでとうございます。
 皆様方には幸多き新年を迎えられましたことを心よりお慶び申し上げますと伴に、本年のさらなるご発展を心よりご祈念申し上げます。また日頃より、公益財団法人医療機器センター、並びに一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構の各事業に多大なるご支援を賜りまして改めて御礼を申し上げます。

 公益財団法人医療機器センターでは、平成28年度から平成32年度までの5年間の中期経営計画を定め、@信頼される中立的機関であること、A事業化の支援を行うこと、Bシンクタンク機能を強化すること、C教育・人材育成を行うこと、D情報提供・パブリシティ活動の5つを中核にして事業運営を行ってきました。

 昨年までの取り組み成果を述べますと、医療機器産業研究所において「産学官臨」の橋渡し役という中立的立場から積極的に行っている事業化支援の活動により、事業化・上市に成功した事例も徐々に増加してまいりました。年間100件以上の相談も増加傾向にあることから、昨年は医療機器の開発・経営戦略、また保険償還等の経験・知見を有する我が国を代表する医療機器企業で長らく活動してきた上級研究員を加えるなどより一層の体制強化を図ってきました。また、企業の人材育成を後押しするための“JAAME Academy”「医療機器の開発実務者育成セミナー」では、受講者から「企画〜開発〜流通までの各フェーズで考慮すべき重要なポイントの理解が深まり、とても有意義なセミナーであった」と好評を得ており、本年からはさらに販売・流通関係のセミナーも企画するなど、産業界に必要不可欠な“ひと”の育成も強化していきたいと考えています。さらに医療機器産業研究所がこれまで精力的に作成してきたリサーチペーパーの多様性と専門性を高めるため、大学・研究機関から一般公募する助成制度も昨年開始いたしました。これまで、「医療機器政策や外部性が医療機器産業の全要素生産性に与える影響についての分析(一橋大学大学院経済学研究科)」、「最適非臨床研究評価体制の構築に向けた国内承認申請に関する調査研究(東京電機大学理工学部)」、「医療機器産業から見た治療方法の特許適格性と特許権の権利範囲(北海道大学大学院法学研究科)」の3件を採択しており、本年から順次その研究成果がリサーチペーパーとして公表されます。

 さらに本年は、特に創立以来30余年を経過し組織と機能が充実してまいりましたことを受けて、これまでややもすれば手付かずだった「より丁寧な認証業務」と「より広い“ひと”の育成」の二つの活動に新たに力強く前進して行きたいと思っております。
一つ目の「より丁寧な認証業務」では、信頼性が高くかつ分かり易い認証業務に努めることであり、より身近な認証機関となることを目指します。医療機器センターは認証対象のすべての医療機器・体外診断用医薬品を業務範囲とする数少ない認証機関として、これまでも新たに基準が指定された高度管理医療機器の認証基準に係る無料説明会を開催してきましたところですが、本年は更に、企業の皆様のご要望を踏まえ、認証申請に係る無料説明会を毎月開催していきます。また、企業の皆様の認証申請に係る無料打合せの積極的な実施、認証業務に係るホームページの全面的な改修など一層のサービス向上に努めてまいります。今後も引き続き、企業の皆さまが認証申請に係る様々な基準や制度の改正等にも対応できるように、業界団体あるいは都道府県単位の説明会に対する講師派遣などの新たな取組みも含めた広報啓発活動を進め、認証までの期間の更なる短縮を図り、新規参入企業や中小企業にも配慮した認証業務を行ってまいります。
二つ目の「より広い“ひと”の育成」では、産業界以外の“ひと”に着目し、社会科学研究者の育成のための「医療機器・社会経済研究会」及び「就活生向け医療機器産業魅力発信ウェブサイト」の立ち上げを行います。前者の「医療機器・社会経済研究会」は昨年12月から先行して始めたものですが、今後ますます医療における重要な役割を担うと思われる医療機器や ICT 技術に関して、研究者による社会経済面からの実証研究を推進するために、研究者間の交流の場を設置するものです。特に、若手の社会科学研究者が医療機器について学び、医療機器に関する実証研究を行うことを支援しようという試みです。医療経済研究機構の西村周三所長にご協力頂き、第1回目は医療経済研究、医療政策研究、法学研究などの専門知識をもつ約20名の研究者が参加しました。今後も2ヶ月に1回程度の頻度で進めて行きながら、医療機器産業がさらなる飛躍をしていくためのアカデミアからの新しい提言が今後継続的に出てくることを期待します。また、後者の「就活生向け医療機器産業魅力発信ウェブサイト」は、その運用を本年5月から開始します。これまで医療機器センターでは、既に産業界にいる“ひと”の人材育成は行ってきました。しかし、医療機器産業の持続的な発展には、各企業が“自社が求める人材像”をきちんと確保できる環境が必要であります。一方、医療機器業界は他の業界に比べ、新卒就職において相対的には人気がない現状があります。その理由としては、医療機器に対する認知度の低さ、および就活生に向けた情報の乏しさがあると考えます。そこで、この取り組みではこれから産業界に入る進路・職業選択を控えている学生をターゲットとして、医療機器業界の魅力を発信するウェブサイトを構築、運用していきます。個別企業の協力も得ながら若手社員のインタビュー記事を掲載し、医療機器“業界”における仕事のやりがいなどを伝えるもので、まずは2020年採用予定の就活生を年頭においています。「より広い“ひと”の育成」は、一朝一夕に出来るものではないため、産業界の皆さまのご協力も頂きながら息の長い長期展望の取り組みとして育てていきたいと考えています。

 以上、本年は中期経営計画の3年目、即ち折り返し中間地点となりますので、これまでの2年間で実施してきたことを引き続き着実に実施しながら、新たな事業も行います。また今後も随時発生する新たな課題にも俊敏に対応しながら、産官学臨のパイプ役となって“明日の医療機器”を総合的に支援していく活動を更に充実させてまいります。

一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構が福島県の指定管理者として運営する「ふくしま医療機器開発支援センター」では、平成28年11月の開所以来一年余りが経過しましたが、日本初の総合的医療機器開発支援拠点として医療機器の開発から事業化までを一体的に支援して国内の医療機器産業の発展に向けてさらに前進させてまいります。

 センター最大の特徴である医療機器の安全性評価試験につきましては、大型動物(実験用ブタ)に特化した安全性評価試験から、電気・物理・化学的安全性評価試験までを、ワンストップで提供できることにあります。試験の受託状況につきましては、生物学的安全性評価試験では、骨材料の長期埋植試験や、新規血管カテーテルの性能評価及び使用模擬試験などを受託・実施いたしました。また、生物に関するその他の受託試験として、病理検査(病理組織標本作製、走査電子顕微鏡による評価、病理組織学検査、ピアレビュー)、血液・尿検査等も行っております。センターには、獣医師、病理医、臨床検査技師等の専門職が、高度な管理体制の上でより信頼性の高い試験データを提供しております。非生物学的安全性試験につきましては、電気的安全性試験では医療機器及び民生機器のEMC試験、機械的安全性試験、耐電圧試験、温度上昇試験、残留電荷試験などを受託・実施いたしました。全国各地にあるEMC試験設備はどこも数か月先まで予約が埋まっていることが多々ありますが、センターは土日の試験にも対応しているなど、急ぎの試験等のご要望に最大限ご協力できるよう万全の体制を整えております。ホームページにはEMC試験設備予約状況も掲載しておりますので、試験の外注をご検討の方はぜひ一度ご覧いただきご活用いただきますようお願いいたします。物性・環境試験については、医療機器のフットスイッチの防水試験や梱包輸送試験(振動試験+落下試験+温湿度試験+圧縮試験)、インプラント用骨ねじのねじ込み・引き抜き試験などを受託・実施しました。分析につきましては、RoHS指令対象物質分析、残留ガス分析、溶出成分分析に加え、不良解析もスタートしました。最新鋭の走査型電子顕微鏡やデジタルマイクロスコープを用い、インプラントの破面写真の撮影も承っております。なお、試験機関としての各種認証につきましては、ISOは昨年11月にEMC及び医療用電気機器、分析の分野について審査を受審し、年度内には取得予定でございます。GLP及びAAALACは、平成30年度後半の取得を目指しております。3つの第三者認証を強みに、日本のみならず海外からの試験受託も視野に入れ、積極的にアプローチしてまいります。
 
 センターにおけるもう一つの大きな特徴としては、医療従事者のトレーニング機能があります。昨年3月には、模擬手術室エリアにおいて医療従事者のトレーニングを兼ねたユーザビリティ評価が行われました。補助人工心臓を開発する県内企業と福島県立医科大学が共同で、医師や看護師、臨床工学技士など多くの医療従事者が参加し、技術の確認やスタッフ間の連携、人工心肺装置の操作方法等の確認等が行われました。センターでは、病院の臨床現場を再現した模擬手術室と模擬アンギオハイブリッド手術室を1室ずつ配備しており、内視鏡装置やCアーム、超音波診断装置などの画像診断装置に加えて、高周波手術装置や超音波凝固切開装置などの治療補助機器、鋼製小物も充実しており、様々な診療科に対応しております。また、最大300名収容可能な研修室も備え、模擬手術室エリアと双方向の映像・音声配信機能を活用した症例検討会やライブデモンストレーション、さらには全国規模の学会の開催も可能です。学会利用についてはすでに数件のお問い合わせをいただいており、さらなる設備の充実を図り、お客様の様々なご要望に柔軟に対応してまいります。模擬手術室エリアのほかには、模擬ICUユニットのある模擬病室において高機能患者モデル人形をはじめとした各種シミュレータを利用した医療処置・看護トレーニングも受け入れています。個人の技量はもとより、病棟や処置室等におけるチーム全体の総合的なレベルアップ、また実際の医療現場を再現してのケーススタディの実践など多種多様なプログラムに対応しています。昨年は、県内医療機関における新人看護職員のトレーニングのほか、潜在看護師の再就職支援研修の利用がありました。また、薬局薬剤師の在宅患者訪問を想定し、患者の状態を把握してチームの医師や看護師に的確に伝えられるようにするためのトレーニングも行われました。

 各種支援事業についても、引き続き継続して取り組んでまいりますが、昨年は新規事業として「ASEAN販路拡大事業」をスタートさせましました。昨年6月にはタイ王国関連機関とMOUを締結し、両地域における医療機器産業に係る人材育成、両地域中小企業の製品開発能力向上のための技術や情報の共有等の相互支援体制が始まっております。9月にはタイで開催された展示会「MEDICAL FAIR THAILAND 2017」に、県内8企業とともに福島県ブースにて共同出展し、タイ企業との商談に結び付くなど、今後の展開が期待されるところでございます。マッチング事業につきましては、医療機器設計・製造展示会&最新技術セミナー「メディカルクリエーションふくしま2017」を10月25・26日の2日間、福島県郡山市のビッグパレットふくしまにて開催し、国内外227の企業・団体の出展、来場者約4,000人と大盛況のうちに終了いたしました。多くの企業様のビジネスマッチングの場としてますます有意義な展示会となりますよう、今年は10月18・19日の開催を予定しておりますので、ご出展とご来場をこの場を借りてお願い申し上げます。コンサルティング事業につきましては、開発から事業化の各段階に合わせた個別実務サポート「Step by Step SUPPORT事業」の提供や、QMS、ISO13485、QSR等の取得支援を通して、医療機器開発を一歩一歩着実にサポートしてまいります。人材育成事業につきましては、企業向け医療機器の設計・製造に精通したエンジニア育成事業として、参入検討段階から海外展開段階までを網羅したプログラムをご提供し、年間50テーマの開催、のべ約280人にご参加いただきました。さらに福島県から委託を受けて、高校生から大学院生・若手企業人材を育成するプログラムも行っており、医療機器分野のリーダーによる最先端の医療技術等に関する特別セミナーを開催するとともに、シリコンバレー短期留学、医療機器に関する研究費助成にも取り組んでまいりました。県内の高校生には、医療機器開発に関する漫画の配布なども行っております。今年もこれまでの取り組みを更に充実させ、医療機器産業の将来を担う若手人材の育成にも力を入れてまいります。

 以上述べましたように、公益財団法人医療機器センター、並びにふくしま医療機器開発支援センターを運営します一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構では、わが国全体の医療機器開発・普及並びに産業振興のみならず、地方発の医療機器関連産業振興にも注力する所存です。両財団が限りなく連携して活動することにより、医療機器に関する「オールジャパンでの取り組み」と「地方独自の取り組み」をより堅固に連携させて、医療機器開発とその事業化、ひいては「わが国の医療機器産業界が真に力強く躍進すること」への一助となれば望外の喜びです。今後も皆様方からの倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

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年 頭 所 感
商工組合 日本医療機器協会
理事長 今村 清
  謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様におかれましては、健やかに「戌年」の新年をお迎えになられたことと存じます。

◎ 成長と発展が期待される医療機器産業

 いま、医療機器産業は、わが国において今後の成長と発展が期待されている産業の1つであります。平成26年6月に施行の「医療機器促進法」、平成26年11月施行の「医薬品医療機器法」、そして、平成28年5月末に閣議決定された「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画」、同年6月に閣議決定の「日本再興戦略」(改訂2016)、そして、平成29年6月に閣議決定の「未来投資戦略2017」では日本初の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化を目指すことを目的とするなど、諸政策にも後押しされています。

 行政の動きとしても、@AI技術やゲノム医療など、高度な技術を活用した先進的医療機器の創出、Aベンチャー企業の支援、革新的医療機器条件付早期承認制度、B医療と産業の健全な発展を支える基盤としての、医療機器規制の円滑な運用、C日本初の革新的医療機器・再生医療等製品の海外展開が見込まれる分野での国際展開を促進する環境整備などが謳われています。
 また、この医療機器業界からも、平成29年10月の「第1回革新的医療機器創出のための官民対話」、同年10月に京都で開催の「薬事規制当局サミットシンポジウム」などで、一般社団法人日本医療機器産業連合会(以下、医機連)より、医療ICT(データ、AI技術等)活用の推進をはじめ、グローバルなビジネス展開を含めた建設的な提案がされています。

 このような医療機器産業の現在の市場規模は約2.8兆円といわれ、年々伸び続けています。その医療機器産業では、大企業はもとより、中小企業も多数の割合を占めています。私ども商工組合日本医療機器協会(以下、日医機協)にも中小企業は多く、それらの会員企業にお役に立ち、かつ、医療機器産業の発展と医療現場のニーズに貢献することをめざして、今年も積極的にさまざまな事業を展開してまいります。


◎ 中小企業ならではのアイデアと機動性でチャレンジ

 今年も、全国各地区の選りすぐられた中小ものづくり企業と会員企業らにより、日医機協が所有する医科器械会館で展示商談会を行い、商談と交流を通じて、中小企業ならではのアイデアと機動性で、既存製品の改良や新製品開発、そして販路拡大などを目指しています。この平成30年3月までに、全国の1都2府22県との展示商談会の開催となります。
 この展示商談会の開催にあたっては、各県並びに市、そして公益産業支援センターや各地区の商工会議所、また、関東経済産業局をはじめとする各地区の経済産業局、医機連、一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会、一般社団法人日本医工ものづくりコモンズの後援など、皆様方より多大なご支援を頂きながら開催に漕ぎつけておりますことを、深く感謝をいたしております。
 今年も、この3月までの29年度内だけでも、1月に青森県、文京区(於:文京シビックホール)、2月に千葉県柏市、埼玉県(於:全国家電会館)、3月に熊本市などと展示商談会を予定しております。
 このほか、全国の大学並びに県庁、公益産業支援センターからの依頼を受けて、医療機器開発に向けての「医療機器ニーズ探索交流会」に、当協会の会員企業及び事務局が現地に出向いて、開発に向けて相談を受けて意見交換を行うなど、その活動は全国に拡がっています。


◎ 消費税等の税制に関連して、業界の商慣習の見直しを

 私は、昨年末、政府の予算案の審議をされる国会議員の講演を聞く機会がありました。その講演の席上、事業用資産を非課税とするなど、税負担の軽減を図る事業承継税制の確立等についての話がありました。
 また、その席上、「高度成長時代の日本の中小企業の事業主の平均年齢が30代と若く、その後、時代とともに平均年齢がそのまま推移しているケースが多く、経営者が一代で築きあげてきたことを意味するが、経営者
の高齢化や引退などの際には、円滑な事業承継が大きな問題になってゆく」との認識を示されました。
 まさに、私ども日医機協の会員企業にも当てはまる面もあると思いました。当協会の会員企業では、古くは創立が明治・大正時代、また、この高度成長期に設立の会員企業がたくさんありますので、企業の税制など、経済的な側面にも注目してゆきたいと思います。昨年10月に、日医機協のJMIAユースアップの会でも「相続・事業承継セミナー」を開催していますが、今後、このような講習会も適宜、主催又は共催する予定です。
 ところで、この税制に関連しての話ですが、2019年の10月に、現在の消費税8%から10%への改定が予定されています。この消費税への対応も企業にとっての大きな問題の1つですが、私は、この医療機器業界内における、既存の消費税も含めた支払いのあり方についてかねてより理事会で言及しております。特に、医工連携ものづくりでは、異業種の新しいビジネスパートナーとの関係を構築するうえでも支払方法を改善すべきとの持論をもっていますので、機会をみて提言をしてまいりたいと思います。


◎ 各種講習会の開催など、従来からの事業もしっかりと

 このほか、平成18年度より実施している「医療機器販売業等の営業管理者及び医療機器修理業責任技術者のための継続的研修」を今年も実施し、その他、医療機器QMSなど、医薬品医療機器法等の講習会も開催いたします。講習会は、所管の行政庁にもご協力をお願いしながら、強力に展開してまいりたいと存じます。これらの講習会の開催も、長年医療機器産業を支えてこられた中小の会員企業が医薬品医療機器法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、前述の事業承継も含めて、情報提供として少しでもお役に立ちたいと思っています。そして、臨床研究法施行をはじめ、企業倫理に係る内容も含めて、会員企業のニーズに応える講習会は、重要な事業の1つとして今後も継続いたします。
 そして、2013年からの連続して参加の「国際モダンホスピタルショウ」にも、今年も参加に向けて検討を行いたいと存じます。当ホスピタルショウは、毎年度、全会員企業にご案内を行い、会員企業が出展して、対外的な情報発信の場としてもすっかり定着しているものです。
 そして、今年も東京都をはじめ、東京消防庁及び文京区など、各行政機関との災害時の協定に基づいて協力体制の整備を目指すほか、「病院船」に係る議員連盟の動きなどを見据えながら、団体としての総合的な災害対策のあり方を研究します。
 また、日医機協のホームページのさらなる充実をめざします。会員企業の役に立つサイトはもとより、対外的に日医機協に興味を持っていただくサイトのリニューアルを進めて、すべての会員企業の皆様にとって利用しやすい、今後も「全員参加の」ホームページをめざします。
 もちろん、従来からの協会の伝統でもある会員交流、福利厚生事業もしっかりと実施してまいります。


◎ 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます

 今後も会員企業の皆様とともに、ご一緒に歩んでまいりたいと存じます。また、全国の医療機器業界団体の皆様、全国の医療機器を業とする中小企業の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展、日本の産業界の発展に少しでも貢献したいと考えております。
 皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心よりお願い申し上げて、新春のご挨拶に代えさせていただきます。
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新年の挨拶
一般社団法人 日本医療機器販売業協会
会 長  森  清 一
 新年おめでとうございます。
 日頃から我が業界の事業活動等へご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

 平成27年6月に医器販協会長に就任し、皆様のご理解・ご協力を賜りながら活動してまいりました。この間、熊本大震災という大規模災害の発生という事態もありましたが、医療機器等の適正かつ安定供給というミッションの遂行に努め、お陰様で昨年6月より二期目に入りました。今後も、医療業界のみならず関係する多くの方々のご協力を得ながらこのミッションの遂行に尽力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
さて、当協会は、医療機器販売業者唯一の全国組織団体として、平成10年11月に活動を開始し、平成26年4月1日には一般社団法人として新たなスタートを切り本年には20年を迎えます。
現在、会員数は約1,100社となっておりますが、これからも一層の医療機器等の適正かつ安定供給という使命達成のための諸施策を実行し、会員の社会的地位向上と業界の発展に寄与する活動をして参りたいと考えております。

 ところで、平成30年は国民の皆様にとって大変影響があります社会保障制度に関し、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる年でもございます。この改定は団塊の世代が全て75歳以上の高齢者となる2025年に向けた道筋を示す実質的に最後の同時改定となるため、医療・介護両制度にとって重要な節目にあたります。当協会としても先ほど申し上げました医療や介護の現場で必要とされる皆様に医療機器等を適正かつ安定的に供給するという使命を果たすことにより、我が国の社会保障制度が目指す「どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)」に向けて、貢献してまいりたいと考えております。

 そこで、本日は年頭にあたって今後の活動に向けた抱負などお話させていただきます。

(医療機器販売業の役割について)

わが国の医療制度は、国民皆保険、フリーアクセスという世界に類を見ない国民のサイドに立った特有の制度の下、医療機関が全国津々浦々に整備され、欧米と比較すると、患者は、医療機関にアクセスしやすい環境にあります。そのような制度のもと、

(1) 医療を支えるインフラ機能を果たす(安定供給)
我々協会員は、離島など僻地を含め地域差なく全国をカバーし、約85万品目にわたる医療機器・医療材料の安定供給を通して、患者の皆様の安全と国民の医療制度の一翼を担うこと。

(2) 医療の質と効率化を目指した適正使用支援業務の実施(安全性担保)
@ 医療機器の特徴的機能から、『預託在庫管理』、『短期貸出し・持込み』、『立会い』、『保守・メンテナンス』等の『適正使用支援業務』により拡大チーム医療に貢献している。
A 緊急症例対応、手技中の不具合などのため、通常営業日だけではなく、休日深夜に至る24時間の対応を行っている。
B 医療機器販売に関わる人の質の向上、スキルアップを目的にMDICやCDR等の認定制度の積極的に取り組み、医療関係者が良質な医療を提供できるようサポートしている。

 こういった活動に多くの人材と時間を費やしながら、医療機器等を安定的、かつ、安全に供給することを通じ、日々国民サイドに立った医療体制を下支えし、安心を提供していくのが医療機器販売業の役割と認識しており、引き続きこの役割を着実に果たしていくことが重要と考えます。


(消費税増税について)

消費税については、景気の動向を考慮し税率の10%の引上げが昨年4月から来年の10月に再延期されたところでございます。また、昨年衆議院の解散総選挙を経て11月に発足した第4次安倍内閣では、当初予定されていた消費税増税分の使途を大きく変更したことはご存じのとおりです。
当協会では、既に消費税の8%増税時に、公正取引委員会に転嫁カルテル・表示カルテルを届出し、この転嫁カルテル等が適正かつ効率よく取り扱われるよう、消費増税に関するパンフレットやQ&Aを作成し、全国での消費税に関する説明会を開催し、会員への理解並びに周知、医療機関等関係者への理解を求めるための周知徹底を図ってきたところです。この取り組みを参考に今後予定されている消費税率の10%への引上げに際しても、業界内で円滑な運用が可能となるよう対策を検討していきたいと考えております。

 一方、平成26年4月に5%から8%へ引上げられた消費税につきましては、これまで、日本医師会や全日本病院会など医療機関団体より医療機関側が負担している消費税がある場合について、その負担の是正を求める要望が出されているところでございます。現在の消費税の仕組みが医療機関にとって好ましくない状況になっているとすると、最終的には医療に携わる全ての関係者の健全な発展にとってマイナスになるものと考えられます。そこで、消費税の適正な運用を求める観点から、当協会としても何らかのメッセージを発信する必要があると考えており、現在、一般社団法人 日本医療機器産業連合会と調整しているところでございます。


(中医協業界意見陳述について)

ご承知のように、本年は2年に一度の診療報酬の改定が4月に実施されます
が、中医協での議論もヤマ場を迎えているところです。今回の診療報酬改定も、前回同様に医薬品、医療材料の価格を下げられると、業界にとっては適正使用支援業務などその使命を果たす上でどうしても行わなければならない分野も抱えており、益々厳しい状況になっていくのではと懸念いたしております。
診療報酬改定議論のなかで、昨年は、8月と12月の二回にわたり中医協・
保険医療材料専門部会において、当協会も@医療機器・材料の安定供給、A特に災害時、パンデミック時の対応の強化を推進、B海外とは異なる独特の流通構造を考慮した価格比較、C医療機器の特性にあった適正使用支援の実施及びコスト、D緊急対応の頻度とコスト、E流通の改善への取組み及び要望を、また、F毎年価格改定については、価格改定後の価格交渉に際して、特定保険医療材料は品目が非常に多いうえに特定保険医療材料以外の保険医療材料の価格交渉も同時に行われるため多大な時間・労力の投入が必要になること等から、流通業界にとって大きな負担となり安定供給と適正使用支援業務に支障のでる恐れがあるので、実施には反対について、医療機器販売業界の立場からの業界意見陳述を行ったところです。
議論の中で特に第二回目の陳述時において委員からは、「流通改善」について一定のルール化なりガイドラインを策定して効率化を推進することの必要性について言及がありましたが、我々業界としてもこの流通の効率化の問題は是非とも推し進めていかなければならない問題だと認識しているところ、この中医協の場での議論は、今後「流通改善」に向けた取組の検討が本格的に動き出す大きなきっかけになるのではないかと思われます。その際、流通の効率化の問題は決して我々の業界だけで解決できる問題ではございませんので、医療にかかわる様々な方面の方のご理解とご協力をいただきながら対応していくことが重要だと考えております。
また、本年の診療報酬改定などに向けて、中医協の「保健医療材料専門部会」
及び「医療機関等における消費税負担に関する分科会」に医器販協から委員を派遣し、医療機器販売業の立場から意見を述べているところです。

今後、流通の効率化などに向けた動きは、中医協で議論が進むのか、「医療機器の流通改善に関する懇談会」(流改懇)で本格的に取り上げられるのかわかりませんが、当協会では、中医協や流改懇などでの流通をとりまく諸問題に対しより敏感に対応するため、会長直轄の流通研究委員会を設置しておりますので、この流通の効率等に関しましてもしっかりと対応していきたいと思います。
また、併せて我が国の医療制度の中で、医療機器流通(適正使用支援等)が医療を下支えすることにより医療のインフラ機能を果たしていることについて、医療を受ける国民はもとより、医療関係者、メーカーの方々などより多くの方のご理解を求める活動を進めていくことも当協会の重要な役割の一つと考えています。


(質の向上について)

医療機器産業ビジョン2013(平成25年6月)の中で医療機器販売業者による適正使用に関する支援業務について、公正な取引慣行の醸成を図るとともに、販売業者にとって、医療機器及び支援業務を提供する医療機関側との相互理解を深め、取り決めや申し合わせ等が交わされることを期待したい。また、医療機器の適正使用支援のための人材育成を強化することで医療に貢献することが期待されることが明記されました。
その一環としと、日本医療機器学会によるMDIC認定制度、並びに日本不整脈心電学会によるCDR認定制度の業界内での普及に努めることになり、医器販協としても、MDIC認定セミナー、CDR認定講習会に対し全面的に協力し医器販協会員事業者の職員の質の向上に努めております。

また、当協会では企業倫理委員会を中心に「企業倫理行動指針」を策定し啓蒙を図るとともに、医器販協の会合又は活動に参加する会員企業の役職員が医器販協の会合の運営や情報交換等、医器販協としての活動について、独占禁止法を含む各国の競争法遵守する「競争法コンプライアンス指針」を策定し実施しているところです。
昨年は基準に満たない製品等を市場に提供するなどして、結果的に顧客の信用失墜につながったニュースが続き、日本の産業の質そのものが疑われるような事態が起こりましたがこれは大変悲しい出来事でございます。当協会といたしましては、この一連のニュースを決して対岸の火事とすることなく国民の皆様の業界に対する信頼を損なわないよう、引き続き企業倫理の醸成とコンプライアンスの遵守に向けた研修会の実施や「医療機器業公正競争規約」の遵守についてその周知を図っていきたいと考えています。


医療機器流通に携わる者は「〜すべては患者の安全にために〜」という考えのもと適正使用支援業務を通じて、医療機関のチーム医療をバックアップする『拡大チーム医療』の一員として、高い倫理観、責任感をもって業務を遂行しなければならないと考えております。そのためには、質の向上のための取組みは継続していくことが何より重要と考え、今後も、行政、医機連をはじめ関係する方々のご支援とご協力を受けながら着実に実施していきます。

医療を下支えしていくことは、単に製品を販売して終了するのではなく、適正使用支援業務などにより、安全性も担保した流通の提供ができて初めて可能となるものと考えます。これからもこの質(安全、安心)をしっかりと確保しながら効率化を図ることにより、医療機器販売業界の向上に努めていく所存でございます。
今後とも様々な課題につきまして、日本医療機器販売業協会の会員、賛助会員及び関係団体と連携して難題を乗り切っていきたいと思っておりますので、関係各位の皆様のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いし年頭のご挨拶といたします。
月刊医科器械は、医療機器・医療器械・医療用品などを中心とした
医療機器関連の情報専門誌として毎月発行しています。
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